研究概要 |
孟宗竹,ウバメ樫を原料として塩化亜鉛による処理をさまざまなケースで検討した結果,特定の昇温パターンでメソ孔以上の細孔の比率が高い活性炭の製造が可能となり,タンニン酸など嵩高い分子の吸着容量の大幅な向上を実証した。一方,単環の芳香族化合物に対しては,メソ孔増加の影響は吸着容量と吸着速度の両方に影響がないことが明らかになった。特に工業的に重要な吸着速度に関しては,粒子径のみに依存するという結果が得られた。表面に酸性宮能基が存在すると吸着形態が変化して,吸着容量と吸着速度の両方に影響を及ぼすことが判った。常温常圧,水溶液中で進行する塩素を含有する芳香族化合物の脱塩化水素反応では,炭素表面で酸素が還元され過酸化水素が発生し,さらに分解によって生成したヒドロキシラジカルと塩素化合物が活性炭上で反応して塩化水素が発生するメカニズムが妥当であることを実験的に示した。また,炭素骨格内にピロール・ピリジンタイプの窒素原子を導入することにより脱塩化水素反応が促進された。2価の重金属陽イオンの吸着でも,炭素上のピリジンタイプの窒素原子が吸着量の増加に寄与すると推測された。特にポリアクリロニトリルから調製した窒素含有活性炭素繊維では,低濃度から吸着し難いカドミウムイオンを吸着除去できることが実証された。陰イオンとして硝酸イオンとリン酸イオンの活性炭への吸着特性を調べた結果,炭素表面の塩基性サイトのプロトン収容能力が吸着に大きく寄与し,イオン種の変化するリン酸イオンではイオン種と表面の電荷の関係で中性から弱酸性で吸着が最も進行することが確かめられた。硝酸イオン吸着では酸性側が有利で,他の共存陰イオンの吸着阻害を受けるサイトと受けないサイトの2種類が存在することが示唆された。
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