本研究の目的である、「超臨界二酸化炭素と高分子の自己組織化を組み合わせた新規な“機能性超溌水性"表面処理技術の創出」を達成するために、本年度は、(1)超溌水性を発現するために最適な構造をもつ高分子の合成法の確立、(2)合成した高分子の超臨界二酸化炭素での溶解挙動の検討、(3)超臨界二酸化炭素で球状微粒子の形成要件の明確化、および(4)球状微粒子の機能化について、多方面から検討を行った。(1)では、高い超溌水性を発現するためには構造が明確に制御された高分子を得ることが必要があると考え、高分子の精密重合法の検討を行った。特に、本研究の第2の目的である「環境に配慮した表面超溌水処理」を念頭において、コスト面にも考慮し、従来の長時間を要する加熱処理による構造制御法ではなく、光によって短時間に重合が完了する光ラジカル重合でのリビング重合について検討した。その結果、従来の光リビング重合ではなし得なかった分子量制御法を確立することに成功した。一方、この重合法の確立と平衡して、超臨界二酸化炭素に親和性の高いフッ素系高分子と親和性の低い炭化水素系高分子からなり、かつ炭化水素系高分子の1部にアミノ基を導入したランダム共重合体を合成し、超臨界二酸化炭素への可溶性と溶解挙動についても検討を行った。その結果、アミノ基と水素結合を形成しやすい多価カルボン酸の添加量によって、共重合体の超臨界二酸化炭素への溶解性をコントロールできることを見出した。また、その多価カルボン酸によって超臨界二酸化炭素中で共重合体の1部が凝集し微粒子が形成されることがわかった。この微粒子の形状は、超臨界二酸化炭素の圧力を制御することによって、直径が数百ナノメートル〜数マイクロメートルの微粒子を製造することに成功した。さらにナノ粒子への染料分子の担持や光分解や光転位反応をを利用して、微粒子の新規な機能化技術についても見出した。
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