環境にやさしく、かつ手法の安全性や簡便性を確保できる溌水性表面処理技術を創出することを目的として、下記の方法で研究を行った。 (1)超臨界CO2中での自己組織化に適合する高分子共重合体を設計し合成する。 (2)高分子共重合体の超臨界CO_2への溶解挙動を調べる。 (3)高分子共重合体が超臨界CO_2中で球状ミクロ粒子を形成する条件を、共重合体の溶解度、共重合体の組成比およびCO_2の圧力を用いて決定する。 超臨界CO_2中での自己組織化に適合する高分子共重合体として、ランダム共重合体とブロック共重合体がある。これまでの著者の研究成果から、ランダム共重合体の自己組織化よりもブロック共重合体のそれの方が、より粒径の小さなナノ粒子が得られることがわかっている。そこで、合成の手法の容易なランダム共重合体と合わせて、ブロック共重合体の合成を行った。さらに、昨年度までの研究成果から、分子量の制御された分子量分布の狭い高分子は、それから形成される微粒子の粒度分布も狭く、より溌水性の高い表面を構築できることが予想された。そこで、分子量を制御するラジカル重合法の確立も合わせて検討した。特に、環境に配慮した手法の利用を目的として、従来の熱による重合ではなく、光によるリビングラジカル重合法の確立を目指した。具体的には、抗酸化剤として広く用いられている安定ニトロキシルラジカルを分子量の制御剤として用いる光リビングラジカル重合を行った。光照射によるラジカル重合で分子量の厳密な制御が可能な重合法は、現在のところほとんど皆無といってよい。21年度は、光照射装置の不具合によって、この研究経費で購入予定だった装置の納品時期が遅れたために、光リビングラジカル重合法の確立や重合の詳細な検討までは行うことができなかったが、重合法を確立するための方向性を定めることができた。
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