難分解性の芳香族化合物を分解できることが知られている白色不朽菌ヒラタケのマンガンペルオキシダーゼMnp2の遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナにカリフラワーモザイクウイルスCaMV35Sプロモーター下流につないで導入したところ、形質転換体は形態異常を示して最後まで生育しなかった。これは、Mnp2が植物の細胞壁を分解しているのではないかと予測された。そこで、組織特異的プロモーターを利用することを考え、葉で特異的に発現している遺伝子Rubisco activaseのプロモーターL15と根で特異的に発現しているR10プロモーターをそれぞれ用いてmnp2遺伝子につなぎ形質転換したところ複数の形質転換体が得られた。これらの形質転換体についてRemazol Brilliant Blueを指標にしでMnp2活性をしらべたところ活性が確認できた。そこで、芳香族化合物であるビスフェノールAの分解を調べたところ、弱いながらも分解活性のあることが示唆された。また、合成染料を分解可能な白色腐朽菌トキイロヒラタケの分泌するラッカーゼLcc2を根で特異的に発現するリン酸トランスポーター遺伝子(PHT1)のプロモーター下流につないでシロイヌナズナに導入した。形質転換体をもちいてジアゾ染料A020の分解能を確認することができた。これらの実験結果から、さまざまな環境汚染物質を分解可能な白色腐朽菌のリグニン分解酵素を植物の組織特異的プロモーターで発現させることで環境浄化型の植物を育種出来ることが示された。
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