本研究では水熱ガス化法と酸化チタン光触媒作用を複合化した新規なバイオマスのガス化プロセスの開発を行なっている。平成21年度では、バイオマスのモデル物質としてグルコースを取り上げ、水熱ガス化に対する酸化チタンの光触媒作用の効果について研究を行った。その結果、以下に示す知見を得た。実験には白金担持した酸化チタン粉末(JRC-TIO-4)を光触媒として用い、反応操作はフロー式で行なった。0.1wt%の触媒を懸濁させた0.05Mグルコース水溶液を、HPLCポンプとピストン付セパレーターを用いて高温高圧反応器に連続注入し、所定の圧力(30MPa)・温度(400~450℃)条件で反応器内の試料に近紫外光(300~400nm)を照射した。発生した気相を捕集器内に回収し、液相と分離後、ガスクロマトグラフィーによる定量分析を行ったところ、比較的反応時間が短く、反応温度400℃の条件では光触媒作用による水素発生の増大が顕著に起きた。一方、反応時間が長く、反応温度450℃の条件ではメタン発生が選択的に促進されることが分かった。この結果は、酸化チタンの光触媒作用によって進行する以下の2種類の反応を考慮することで理解される。すなわち、温度400℃で反応時間が短い場合には、伝導帯電子による水の還元反応が優先的に進行し水素が選択的に発生する。一方、温度450℃で反応時間がある程度長い場合には、中間体であるカルボン酸が多量に生成するため、伝導帯電子とカルボン酸の光コルベ反応が進行し、メタンが選択的に発生する。さらに、高温高圧条件下ではフィッシャー・トロブシュ型反応によるメタン発生も関与していると考えられる。以上の研究成果により、水熱ガス化法と酸化チタン光触媒を複合化した新プロセスにより、グルコースのガス化において水素またはメタンの選択的な製造が可能であることを実証した。
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