本研究の目的は、高速処理が可能な省エネ・省資源型で廃棄物が低減できるUASB+DHSシステムの実験装置を使用して、これまで食品系産業廃棄物として焼却・埋め立て処分されていた食堂などの厨房から発生するグリストラップ廃水の減量化と再資源化する新規な生物学的処理システムを開発することである。21年度は、本システムの実用化に向けた、経済性を考慮した最適運転方法を検討するために、UASB槽への流入原水pH、DHS槽への空気供給と処理水循環の必要性、DHS槽の処理性能に及ぼす水理学的滞留時間について連続実験を行って確認し、以下の知見を得た。 1.UASB槽への流入原水pH UASB槽の処理性能を良好に維持するためには処理水pHを6.7程度以上にする必要があるが、過剰な苛性ソーダの注入は運転経費を高価なものにしてしまう。連続実験を通じて、処理水pHが6.7以上を安定的に維持するためには原水pHを6.2に調整すればよいことを確認した。 2.DHS槽への空気供給と処理水循環の必要性 DHS槽における空気供給や処理水循環にかかる動力も経済運転を行うためには最小限に抑える必要がある。連続実験を通じて、空気供給の必要はないこと、処理水循環比は2.5倍までは処理性能に影響を及ぼさないことを確認した。 3.DHS槽の処理性能に及ぼす水理学的滞留時間 DHS槽内の充填スポンジ量を変化させることにより、水理学的滞留時間(充填スポンジ内水容積を原水流量で除した時間)を9.2時間、6.4時間、3.6時間に段階的に減少させた。その結果、9.2時間の場合では比較的良好な処理性能(CODcr除去率50~60%程度)を維持することができたが、6.4時間より短くなると処理性能は著しく低下することが確認された。
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