研究概要 |
本研究では、北米に自生するStanleya pinnata(スタンレア・ピナータ)のセレン耐性・高蓄積性のメカニズムを解明し、その成果をセレン高蓄積性植物の分子育種に応用することを目的とする。前年度の成果により、モデル植物であるシロイヌナズナのcDNAアレイがスタンレア・ピナータにも適用できる可能性が示唆された。そこで本年度はスタンレア・ピナータにおけるセレン耐性・高蓄積性の獲得に必要な因子の分子レベルでの特定を行った。具体的にはシロイヌナズナ由来の硫黄代謝・輸送に関与する遺伝子、植物の防御応答に関与する遺伝子及び植物ホルモンの合成に関与する遺伝子のcDNAを網羅的に載せたカスタムメイドマクロアレイ(約400遺伝子から構成される)を作製した。このDNAアレイを用いて、スタンレア・ピナータ及びその近縁種でありセレン耐性・高蓄積性を示さないStanleya albescens(スタンレア・アルベセンス)から単離したmRNA存用いて、これらの植物間におけるセレンの有無による遺伝子発現パターンに違いがあるのかどうかについて調べた。その結果,スタンレア・ピナータにおいて植物の防御応答、硫黄代謝及び植物ホルモンの合成・応答に関与する遺伝子の発現が構成的に高いことが示された。また、スタンレア・アルベセンスに植物ホルモンであるエチレン、ジャスモン酸を投与するとセレン耐性・蓄積性の向上が見られた。これらのことからスタンレア・ピナータにおけるセレン耐性・高蓄積性の獲得に植物ホルモンが大きく関与していることが示唆された。
|