固体表面構造の微視的な変化がどのようにしてバルクの特性に影響を与えるのかを明らかにする目的で、構造のよく定義されたいくつかの単結晶表面を用いて実験を行った。方解石については引っかき針による表面の摩耗に伴い、特定面に沿った亀裂が進行する過程を高速カメラにより記録し、亀裂の進行速度を測定した。破壊現象を理解するための基礎データである。 液相を通じた結晶表面形状の変化についてはNaCl単結晶間で水溶液から出発して架橋が起こる過程を直接観察した。バルクで起こる粉末の固結のメカニズムを説明することができた。また、固結防止のためにしばしば用いられる添加剤がどのような微視的過程により機能を発揮するかをいくつかの例で明らかにした。日常出会う現象の中にあるサイエンスの一端を見ることができた。 平面三角形のイオンを含むPbCO3結晶について、炭酸イオンに対するプロトン付加などによる特定結晶面の安定化が起こる様子を原子間力顕微鏡によるファセット形状のリアルタイム観察を通じて明らかにした。様々な環境で結晶が育つとき、なぜ特定の形ができるかを説明できるようになる。 実用の炭素材料であるガラス状炭素については湿式酸化に伴う表面構造変化を調べ、硫酸、硝酸、過酸化水素による作用の違いを微視的測定により明らかにした。また、イオン注入による表面構造の変化、生体適合性への影響についても明らかにした。実用材料の開発においてもナノレベル、ミクロンレベルの計測技術が有効であることを示すことができた。
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