研究課題
結晶表面の機械的変形について、これまで検討してきた方解石と同じ構造を持ち、硬さの異なるマグネサイト(MgCO3)の同じ結晶面についての表面の摩擦・摩耗の計測を行った。その結果、非対称的な摩擦特性を持つカルサイトの特徴が明らかとなった。すなわち、滑りの起こりやすさは面間距離に依存すること、滑りと劈開の起こり方に順序があることなどが分った。また、立方晶系のフッ化カルシウム結晶についても3つの基礎的な結晶面について機械的変形の効果を原子間力顕微鏡等で観察することにより、集中荷重を加えたときに表面にかかる応力の様子が明らかとなった。上記の結果を総合的に考察することにより、一般に結晶の塑性変形がどのように起こり、それが摩擦にとのように関連が明確になってきた。国内学会で発表・討論を行い、結果をまとめて論文発表する準備を整えた。硬石膏のすべり系についても構造モデルから予想される滑りの証拠が得られ、既報のデータを修正すべきであることが明らかとなった。アラゴナイト型炭酸塩結晶表面の安定性については前年度の結果を国際会議で発表・討論し、論文にまとめた。水素イオン濃度以外に表面を構成するイオンの極性も重要であることが分かったので、方解石の結晶表面については溶媒として水にエタノールを混ぜて極性を小さくしたときの弱酸性溶液中での表面の安定性を調べた。その結果、水溶液中では安定化しない極性面や極性レッジを含む結晶面がある程度安定になることが分った。結晶構造の近いマグネサイトについては弱酸性水溶液での溶解実験を行った。溶解度積が方解石に比べて大きいにも関わらず溶解速度が遅く、速度的因子によってエッチピットの形状が変化した。その理由はイオンの拡散場の形状で説明できる。結晶形状の制御因子がまた一つ明らかになった。
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Journal of Crystal Growth
巻: Vol.324, No.1 ページ: 190-195