研究概要 |
本研究は,光照射の有無により高抵抗(オフ)状態と低抵抗(オン)状態を繰り返し遷移する光制御型抵抗変化スイッチの開発とそのナノスケール化を目的としている。具体的には,イオン伝導体薄膜の両側を金属および透明電極で挟み込んだ素子構造を作製し,透明電極側からレーザー光を照射して光誘起の固体電気化学反応により伝導体膜内に金属のフィラメント構造を形成しオン状態を作り出す。 20年度はスイッチ材料の最有力候補であるイオン-電子混合伝導体の硫化銀(Ag_2S)を用いた素子化を試みた。レーザー堆積法を用いることにより,均一な膜を得ることに成功した。この膜を用いて,Ag/Ag_2S/ITO 素子を作製したが,スイッチ動作を確認することはできなかった。Ag_2S膜上に上部電極(Ag,ITOどちらでも)を付ける時にAgが析出・溶解反応を起こしてしまうことがわかった。この結果はAg_2Sが本研究の素子作製方法には適しておらず,より安定な電解質材料を探す必要があることを意味している。現在,カルコゲナイドガラスのGeSと超イオン伝導体のRbAg_4I_5を用いた素子を作るために,それぞれの材料の薄膜作製方法を検討している。 また,Ta_2O_5やSiO_2などの還元されにくい酸化物薄膜でも,電圧印加下でAgやCuの金属イオンが固体電気化学反応により内部に金属フィラメントを形成することを見出した。この結果は光スイッチ材料として酸化物も候補になり得ることを意味しており,現在その可能性も検討している。
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