20年度においては、水晶発振子(QCM)と組み合わせることのできる光学的な手法として金の異常反射(AR)を応用し、基本的な測定システムの構築を行った。さらに、このARの光応答量を増大させるための種々の表面修飾の試みを行った。その結果、QCMの金電極上に、有機無機複合体分子を単分子修飾し、さらにその上から金の薄膜を蒸着すると光応答が5倍以上上昇することを明らかにした。このことは、原理的にも未解明な部分はあるものの、新しい表面物質量の光検出の方法論として期待される。 さらに20年度は、プロトタイプのAR-QCM装置を用いてDNAの構造に依存した物性評価と、タンパク質のプロテアーゼによる加水分解反応の反応動力学の検討を行った。DNA測定の結果、DNAの固有粘度に関する量が本法により測定できること、一本鎖DNAと二本鎖DNAの物性の違いを測定できることが明らかとなった。またプロテアーゼ反応に関しては、基質として柔らかいタンパク質を用いた場合、同じ反応を同一基板上で測定しているにも関わらず、QCMとARでは測定結果が大きく異なることが分かった。種々の検討の結果、これは、加水分解過程において基質タンパク質の物性が固く変化する場合、QCMでは実際の質量減少以上に振動数上昇が起こってしまうためであることが分かった。つまり、表面物質量の定量性の高いAR測定では物質量を厳密に議論でき、それに対するQCM応答を比較することで表面吸着物質の物性評価をin situで行えることが明らかとなった。このようなことは他の測定法では難しく、本法により初めて定量性よく観察できた。
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