本研究では、水晶発振子マイクロバランス法(QCM)と光反射測定を組み合わせた同時測定に関するものでもあるが、光測定法として21年度においては、酸化チタン/チタン薄膜を用いた反射干渉分光法が本系に応用できるか検討することとした。QCM上に蒸着した金属チタンを陽極酸化することにより、光干渉層としての酸化チタン薄膜を作成した。この表面に対して有機物が吸着することで干渉スペクトルのシフトが起こり、これにより吸着物質量の定量を行うことができる。結果として、理論道理の感度の向上が達成された。この装置を用い、各種タンパク質の表面への吸着過程のQCM/光反射同時測定を行った。その結果、タンパク質固有の粘弾性に依存したパラメータの算出が可能となることが示された。 また本年度は、昨年度から引き続き行っているQCMと金の異常反射(AR)を組み合わせた測定装置を、これまでのフロー式から変え、バッチ式で行えるように新たに開発を行った。これによって、長時間の反応追跡が行えるようになった。この装置のキャリブレーションを行うとともに、DNAの構造に依存したQCM/AR同時測定による構造特異性を明らかにすることができた。具体的には二本鎖と一本鎖DNAの鎖長に依存した同時測定パラメータが得られ、これが高分子溶液粘度の分子量依存性を示すMark-Houwink-Sakurada式とよい相関があることが示された。分子量範囲と精度を上げた結果であったが、フロー式で得られたものの再現性も確認された。 さらに、プロテアーゼの酵素活性の振動効果についての検討もQCM/光反射同時測定装置によって行った。その結果、基質タンパク質の粘弾性に応じて、反応動力学パラメータが振動の有る無しで変化し得ることが分かった。
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