本研究では、圧電素子である水晶発振子の共振周波数変化から素子表面への物質の吸着量を測定する手法である水晶発振子マイクロバランス法(QCM)と表面への吸着薄膜の膜厚を光干渉により定量化する光反射測定を組み合わせた装置をまず構築することを目標とした。さらに、これら異なる原理に基づく二つの測定結果を比較することで、センサー表面への正確な吸着量を定量化するとともに吸着物質の物性を評価し、且つその機能を制御する検討を行う事を目標としていた。 前年度までに、光反射測定として金の異常反射を用い、DNAの構造に依存した物性評価を行い、さらに新しい光反射測定技術として酸化チタン/チタン表面を用いた反射干渉分光法を確立した。今年度は、この新しい光測定法とQCMを組み合わせ、各種リボソームの物性評価をまず行った。またこの際、QCMとしてはネットワークアナライザを用いたアドミッタンス法を用い、発振子の周波数変化と共にエネルギー散逸値を同時測定し、吸着物質の粘性パラメータを取得した。その結果、用いたリボソームの状態に応じて、光学応答に対してQCM応答が異なり、かたい状態にあるほどQCMは重く感じていることが分かった。これはセンサー表面でのリボソーム溶液粘度を反映しているものと考えられる。単位光学応答に対するQCM応答の大きさはエネルギー散逸値と直線関係にあることも解り、QCMの粘性応答性が再確認された。 また、表面に基質としてのタンパク質を固定化し、プロテアーゼ反応を振動モードをかえて光学応答によりモニタリングした。その結果、振動の種類に応じて酵素活性が制御され得ることが分かった。
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