研究概要 |
グラファイトにCuおよびSiを添加した材料をレーザー蒸発用のターゲットとして用いて,アルゴンガス雰囲気中で一次元ナノ複合構造形成の研究を行った。カーボンや金属の相対的な存在密度,雰囲気アルゴンガスとの衝突による冷却速度,温度勾配などから,さらなる選択的形成制御へと発展させた。Cuの場合では,1層から5層のカーボンナノチューブがCuナノワイヤーを完全に内包する構造(平均外径は20nm)が形成された。雰囲気アルゴンガス圧をさらに制御することにより,導電性材料として期待されるCuを内包するカーボンナノカプセル(直径50から150nm)を効率良く形成できることもわかった。Siの場合には,アモルファスSiCナノワイヤー,結晶性SiCナノプレートレット,および結晶性SiCナノワイヤーを内包したカーボンナノチューブ(Cuの場合に比べて多い20から30の層数)が形成された。また,微量のSiの存在により,Siを含むグラファイト性多面体粒子が形成された。Si量と雰囲気アルゴンガス圧がナノ構造や層数の制御,結晶性の制御などに重要であることを明らかにした。また,副生成物として,直径20nm程度の純粋なSiのナノワイヤー(高分解透過型電子顕微鏡観察からアモルファスおよび結晶性構造)が得られ,触媒フリーの形成機構(溶融Si粒子へのSiの供給,拡散および析出)の提唱へとつなげた。さらに,Cuナノワイヤー内包カーボンナノチューブの導電性について研究し,良好なCu内包の効果を認めた。様々な温度での加熱による内包Cuナノワイヤーの移動挙動との相関性などから,Cuナノワイヤーの存在状態や結晶性が関与していると推定した。
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