今年度は水平付着法を用いてコア径約5nmのCdSe/ZnSコロイダルドットの単粒子層薄膜をシリコン基板上に作製する条件の検討を行った。この方法では、コロイダルドットを有機溶媒に分散させて、それを水面上に展開した後、溶媒の蒸発に伴って2次元的に凝集したドットをシリコン基板上に移す。したがって、有機溶媒の種類、ドットの濃度、水面上に展開させる量などを最適化する必要がある。本研究では、有機溶媒にクロロホルムを用い、ドット濃度が0.01wt%の場合に40から50マイクロリットルの溶液を展開すると、見かけ上の表面被覆率が85%程度で、均一なドットの単粒子層を形成できることがわかった。 しかし、原子間力顕微鏡を用いてドットの単粒子層を観察しても個々のコロイダルドットは観察できないため、コロイダルドットが最密充填的に凝集しているかどうかは判断できない。そこで、ドットの単粒子層を有機電界効果トランジスタ(FET)のゲート絶縁膜と活性層の界面に埋め込み、FETのゲート閾値電圧変化から平均ドット密度を評価する手法を開発した。その結果、ドット密度は最密充填の場合の25%程度に留まっており、隣接するドット間には平均でおよそ5nm程度の間隔があると推定される。したがって今後はドットの密度を増加させることが課題である。 また、上述の有機FETにおけるゲート閾値電圧の変化を一種のメモリ効果であるため、これを応用して有機メモリ素子を作製できることもわかった。この点についても今後検討する予定である。
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