本研究では、直径数ナノメートルの半導体コロイダルドットの2次元結晶薄膜を用いて、高いキャリア移動度を示す薄膜トランジスタを開発することを目的としている。 平成22年度は、前年度に引き続きドットの2次元結晶薄膜を作製するために、水平付着法を用いて、CdSe/ZnSコロイダルナノドットの単粒子層薄膜をシリコン基板上に形成する実験を行った。その結果、平坦性を向上させた基板を用いて作製したドット単粒子膜表面を周波数変調型の真空原子間力顕微鏡(AFM)で観察し、個々のドットを分解できる凹凸像を得ることに成功した。これによりドットが完全には2次元的に最密充填配列されていないことがわかった。広い面積で良好に2次元配列させるためには、さらに基板の平坦性を高める必要があると考えられる。 一方、ドットの密度を電気的に評価するために、ドットの単粒子層を有機電界効果トランジスタ(FET)の半導体層とゲート絶縁層の間に埋め込み、ドットにキャリアを閉じ込めた場合のしきい値変化量の大きさを測定する手法を開発した。このしきい値変化は長時間持続することが確認されたので、コロイダルドットをフローティングゲートとする有機メモリFETとして応用できる可能性が考えられる。しかし、ドット単粒子層上に形成した有機半導体層は結晶性が悪く、FETのキャリア移動度が大幅に低下することが明らかになった。そこで、有機メモリFETの構造を改良し、世界でトップレベルの大きなメモリ効果と高いキャリア移動度を有する素子を作製することに成功した。
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