触媒金属原料となるAuナノコロイド溶液もしくはNiO薄膜作製用EMOD溶液を塗布したa面もしくはc面サファイア基板上へのZn粉末とH_2Oを原料とする大気圧化学気相堆積(AP-CVD)法によるZnOナノ構造の成長と形状制御の可能性を検討した。ZnとH_2Oの同時供給によってAuナノコロイド溶液塗布サファイア基板上に作製したナノロッド(NRs)の形状が基板温度(T_s)の上昇に対して柱状から円錐状に変化した。この円錐化は、NRs成長に触媒金属を介した気相-液相-固相(VLS)機構による軸方向成長と気相一固相(VS)機構による直径方向成長とが競合し、T_sの上昇に伴い後者の寄与が増大することによって生じる。VS機構とは対照的にVLS機構ではZnとH_2Oとが時間的に分離して供給されても、合金液滴として蓄積されているZnと外部から供給されるH_2Oとが反応し、ZnO結晶の成長が進行する。したがって原料の交互供給によってVS成長の抑制とVLS成長の増強の可能性が期待される。この予測どおりAuナノコロイド溶液塗布サファイア基板上への成長実験では、交互原料供給によってNRs成長が可能であり、この方法がT_sの上昇に伴う円錐化の抑制に有効であることが明らかになった。一方、NiO用EMOD溶液塗布サファイア基板上への交互原料供給によるナノ構造成長実験では、タイムシーケンスとT_sに依存してマイクロメートルスケールの柱状構造、傾斜成長NRsあるいは垂直配向KRsなど多様な形状を有するZnO結晶が成長することが確認された。また、このAP-CVD法によって作製した薄膜の不純物分析からは不純物としてLi、 C、 Na、 Ca、 K、 Al、 Siなどが取り込まれていること、フォトルミネッセンス測定からはドナー性不純物であるHの濃度がT_s及びH_2OとZnの原料供給比によって制御可能であることを示唆する結果が得られた。
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