昨年までに明らかにした最適成長条件の下で大気圧CVD法によるZnOナノロッド(NRs)への希土類元素ユウロピウム(Eu)の添加を試みたが、フォトルミネッセンス(PL)測定ではEu^<3+>イオンの内殻遷移発光線は観察されなかった。そこでコア層をZnOから混晶CdZnOに変更し、シェル層にZnOを用いたコア/シェル構造を作製することとした。その予備実験としてCd粉末とH_2Oを原料、Auナノコロイド溶液を触媒とする大気圧CVD法によるCdO NRsの成長を試み、この原料系での単結晶CdO NRsの成長の可能性を初めて明らかにした。CdO NRsにおいても、ZnO NRsと同様に基板温度の上昇に伴うテーパリングの上昇が見られた。更にNRs気相-液相-固相(VLS)機構による軸方向成長と気相-固相(VS)機構による直径方向成長の成長時間依存性の調査からは、成長開始数十秒以降で軸方向成長は飽和し、直径方向成長のみ緩やかに進行することが明らかになった。光音響分光測定からは、基板温度上昇に伴う真性欠陥由来の吸収帯の増強が見られた。またCdOナノ構造の形態は基板温度以外にも、基板の面方位や触媒溶液濃度によって多様に変化し、らせん状にねじれたNRs、幹となるNRの側壁から枝状のNRが成長したナノツリー(NTs)、さらにはNTsをユニットする3DNTsネットワークが得られた。これらの構造の多様性には、VLS機構とVS機構の競合以外に触媒Au微粒子の分裂やマイグレーションの関与が考えられる。CdZnO NRsの成長を試みているが、これまでのところCdOとZnOが相分離し、CdO NRs表面をZnO微粒子が修飾する構造が得られているのみである。NRsの成長実験と並行してNRs成長用テンプレートとして応用可能なZnO薄膜の有機金属化学気相堆積法及び大気圧CVD法による作製実験とPL評価実験も行った。
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