本研究では、絶縁膜を貫通する数ナノメートルの導電性ナノ細線が生成・消滅するスイッチング機構の解明を行い、次世代の不揮発性メモリデバイスとして期待されているRRAM(Resistive RAM)に応用するための基盤技術の開発を行う。現時点でHfO_2等の二元系遷移金属酸化物薄膜の実用化が進んでいない最大の理由はスイッチング機構の不明なことである。これを明らかにすることができれば、スイッチング特性を向上させるための材料設計指針が得られ、RRAMによるDRAM代替が実現性を帯びてくるものと考えている。平成21年度は前年度に続きTi酸化物、およびCu酸化物のスイッチング機構について詳細に調べた。 前回報告したとおり、Ti酸化物については、Pd電極を酸化させることによりスイッチング回数が増加することを報告した。今回、この試料について深さ方向のXPS分析を行ったところ、Ti酸化物内の酸素濃度の増加が認められた。スイッチングは導電性フィラメントの酸化、還元により起きていると考えているが、スイッチングの際に表面からの酸素の離脱による酸素濃度の減少が起きていると思われる。したがって、Ti酸化物内での酸素濃度の増加がスイッチングの安定性につながった可能性がある。 Cu酸化物については、スイッチング過程を可視化するために、表面の電極間でスイッチングを起こさせた。前回、電極間で酸化物の融解が認められることを報告したが、今回、TEM観察を行うことにより、この部分で金属Cuの存在が確認された。ジュール熱により、熱的に酸化物が解離したものと推測される。
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