Cu 2O、NiO、TiO 2などの酸化物は高抵抗状態と低抵抗状態を示し(抵抗変化スイッチング現象)、次世代のメモリ素子として期待されているReRAMへの利用が検討されている。スイッチングの原理としては、酸化物内に導電性のフィラメントが形成され、一部が再酸化、還元を繰り返すことでスイッチングが起きるという説が有力であるが、未だに結論は得られておらず、素子の特性向上への指針が明らかになっていないというのが現状である。これは一つには、抵抗変化がナノメートルレベルの厚さの薄膜の内部で起こるために、現象の観察が難しいことによる。 そこで、申請者らは試料表面に二つの電極を取り付けた構造を採用し、この電極間で抵抗変化を起こさせることにより、抵抗変化現象の直接観察を可能とした。特に、今年度はCu 2O素子のフォーミング過程を光学顕微鏡によりその場観察することで以下の知見を得ることができた。 ・ 二つの小さなフォーミング過程が連続して起こっていることがわかった。特に、二段目の過程は試料表面の溶融を伴う。 ・ 透過電子顕微鏡(TEM)による試料断面の観察により、二つのフォーミング過程の後にCu 2Oの母層内にfccのCuのフィラメントの形成が確認できた。特に、一段目のフォーミングで形成されるフィラメントについては、母層と同じ結晶方位を有している。 ・ その場観察により、二段目のフォーミングでは電極間の溶融部分が陰極方向から凝固する様子が確認された。これはCuのフィラメントが電気化学的な反応により陰極から陽極方向へ成長することを示唆している。
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