金属ナノ粒子は、ナノテクノロジーを支える材料として、近年とみに注目されている。特に最近は粒径が揃い、かつ安定なものが得られるようになり、IT革命の推進役とされている。本研究者は、高分子や低分子の保護剤の存在下、金属イオンを還元する方法を用いることにより、種々の金属ナノ粒子の粒径および構造を制御することに成功している。金属ナノ粒子は、保護剤の種類や状態により、その機能、性質および触媒特性に大きな影響を受ける。一方、包接化合物は、その疎水的な空洞内に様々な化合物を取り込み、錯体を形成することで知られ、今日迄に酵素モデル、分離機能材料、触媒等として利用されてきた。本研究は、包接化合物を金属ナノ粒子の保護剤に用い、空洞内にゲスト分子を取り込むことで、金属ナノ粒子/包接化合物/ゲスト分子の三元錯体を形成することにより従来全く考えられていない、金属ナノ粒子/超分子複合体を創製することを目的とする。本研究では、ポリ(γ-シクロデキストリン)(PγCyD)で安定化した新規酸化物ナノ粒子を創製し、これを液晶に分散させることで、より高速に応答するLCDの開発を目的とした。PγCyD-ZrO_2ナノ粒子の添加によって、実用液晶の応答時間(t_<on>+t_<off>)は、25℃で11.23msecから6.60msecへ41%、0℃で23.74msecから15.98msecへ33%と大幅な短縮に成功した。これらの応答速度の向上は、ナノ粒子を液晶中に分散することで、液晶の配向状態への乱れの導入と、LCDの低粘度化によるものと思われる。また、駆動電圧を透過率が90%になるときの電圧V_<th>で評価した。その結果、0℃において、ナノ粒子未添加の閾値電圧(1.77V)と比較し、ナノ粒子添加系では1.03Vと42%も駆動電圧の低減に成功した。
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