研究概要 |
ククルビツリル(CB[n])は、グリコウリル単位がn個メチレン単位を介して環状につながった、樽状構造をとる包接化合物である。他の包接化合物に比べて、安く簡単に合成できるという利点があるが、溶媒に溶けにくく加工性に欠けることから、応用に関する研究はあまり知られていない。本研究室では、包接化合物であるシクロデキストリンを保護剤に用いたナノ粒子を創製し、種々の応用について報告してきた。本研究では、CB[n]を保護剤に用いた新奇金属ナノ材料を創製し、この応用について検討した。CB[6]は、水への溶解性が低いが、添加するNaOH aq.の濃度を変化させることで、溶解させることが可能となった。TEM観察の結果より、ククルビツリル[6]保護白金(CB[6]-Pt)ナノ粒子の平均粒子径は2.1nm、標準偏差0.6nmであった。CB[6]-Ptナノ粒子の触媒機能をサイクリックボルタンメトリー(CV)測定により評価した。CV測定にあたり、プロトン伝導性に優れ、燃料電池材料に用いられているNafion[○!R]を添加した。CB[6]-Ptナノ粒子は、過塩素酸溶液中でのCV測定で、白金に特徴的な水素の吸着/脱着ピークが確認され、市販のPt-Foilより高い触媒活性を示す興味深い結果を得た。また、ナノ粒子の合成過程でNaOH aq.濃度を変化させることで、CB[6]-Ptナノワイヤーを形成する大変興味深い現象を見出した。特に、NaOH aq.濃度が1.0Mの際に、平均長さ2700nm,平均直径115.5nm,アスペクト比23.4の安定なワイヤーが得られた。このワイヤーの形成は、デュヌイ表面張力試験器を用いて測定したところ、NaOH aq.濃度0.78M以上でミセルが形成することに起因する。また、グリコウリル単位の異なるCB[5]、および、CB[7]を用いてナノワイヤー形成の確認を行ったところ、同様にPtナノワイヤーが得られた。
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