研究課題/領域番号 |
20510111
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石川 満 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (70356434)
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研究分担者 |
伊藤 民武 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (00351742)
安部 博子 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究員 (40363220)
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キーワード | 表面増強ラマン散乱 / 出芽酵母 / 細胞周期 / 細胞分裂 / マンノタンパク質 / 暗視野照明 / 弾性散乱光 / 細胞表面 |
研究概要 |
本研究の目的は、細胞膜表面に局在するタンパク質分子を、in situで迅速に検出・同定することである。重要な機能を担っているタンパク質の種類が、細胞周期に依存して数分程度で変化するので、通常のラマン分光と比べて格段に高感度な測定が必須である。この要件を満たす測定手段として表面増強ラマン散乱(SERS)に着目してその有効性を検証した。本研究の意義は酵母細胞の細胞周期をあるタンパク質を指標として非侵襲に近い条件で可視化しそのタンパク質を同定できたことである。 上記検証を実施するモデル系として、生物学および生化学的に詳しく調べられている出芽酵母細胞を選んだ。酵母細胞を、溶液中で銀ナノ粒子と共存させて白色光を用いて暗視野照明すると細胞表面に青~緑色の輝点が観測される。この輝点は白色光が細胞表面に吸着した銀ナノ粒子により弾性散乱に起因する。次に、光源を単色のレーザ光(532nm)に代え、同じ視野を照射すると黄~橙色の輝点が弾性散乱光の輝点と同じ場所で観測される。この輝点はSERS活性を示す銀ナノ粒子に吸着した分子のSERSに起因する。測定されたSERSスペクトルを参照試料のSERSスペクトルと比較した結果、マンノタンパク質の一種であった。さらに、1個の出芽酵母細胞の分裂過程に注目して、同じ視野で弾性散乱輝点とSERS輝点を観測すると、出芽の初期では、その部分には銀ナノ粒子による暗視野照明輝点とSERS輝点は観測されない。出芽が進み出芽部位が大きくなり、細胞分裂が起こる直前では親細胞と同様に娘細胞にも弾性散乱像とSERS像が観測された。SERSを発現しているタンパク質を同定するために、細胞表面を各種試薬、酵素で処理して弾性散乱輝点とSERS輝点の有無を調べてタンパク質の種類を絞り込んだ。さらに候補タンパク質を発現する遺伝子を制御した細胞を調製して、発現の有無と弾性散乱輝点とSERS輝点の有無の相関を調べて最終的にタンパク質を同定することに成功した(論文投稿中)
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