本研究の目的は、単一蛍光分子制御技術(分子の置かれているマトリックス環境の制御、分子配向制御、電場印加による発光の変化)及び計測システムを開発し、これらの技術及び計測システムを利用し、光デバイス、センシング等への将来的な応用を目指すことにある。本年度は計測システムの開発及び分子の置かれているマトリックス環境の制御に関する研究の一部を行った。単一蛍光体としては量子ドットコロイド(CdSe/ZnSコアシェルナノクリスタル)及びクマリン6を選んだ。これらの蛍光体をPMMAマトリックス中に少量ドープした薄膜試料を用い、単一分子レベルでの蛍光特性の評価(蛍光寿命測定、蛍光強度の時間依存性(ブリンキング)、光アンチバンチング測定)を行った。当該年度の研究計画には記載はされていないが、高真空下あるいは高純度窒素下における単一蛍光体の蛍光特性の評価も行った。これも分子の置かれているマトリックス環境の制御の一つと考えられる。また、計測システムの開発においては、高真空下及び様々なガス環境下において高効率高分解能で蛍光を集光できるよう、屈折率マッチング媒体として高真空下においても揮発しないイオン性液体と開口数の高い液浸対物レンズを用いた顕微鏡ユニットを作製した。また、量子効率が高く、ダークカウントが非常に小さく、検出面積が比較的大きい光電子増倍管を検出器として用いた時間相関単一光子係数計測システムを作製し、上記の蛍光特性評価に用いた。当該年度の研究成果は、本研究課題を推進していく上で重要であるだけでなく、本研究課題とは別の分光測定(ラマン散乱、非線形光学など)にも応用できると考えられる。
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