研究概要 |
酸化物基板上の薄膜に適用可能なスタティックなX線定在波法の測定システムを作製した。通常の酸化物結晶基板は単結晶のドメインサイズが、半導体結晶に比べて一般に小さいため、そういった基板に育成された系の構造解析への硬X線定在波(HXSW)法の適用は非常に限られている。そこで入射ビームの水平方向を集光させるとともに、垂直方向の発散角度を可能な限り小さくした光学系を作製し、HXSW法を酸化物薄膜構造解析に適用することを試みた。 作製した光学系は、2個のシリコン004チャンネルカット結晶と水平集光型の屈折レンズから構成された。そのチャンネルカット結晶はモニタスタビライザを用いて角度位置を制御した。ビームサイズは縦100ミクロン、横7ミクロンを用いた。 試料は特別にHEM法で育成されたサファイア基板上にMBE法で成膜した膜厚約1nmのNiO超薄膜であった。 光子エネルギー12.4keVのX線を試料に入射し、10-14,2-1-13,0006,21-33,2-1-13,11-23,1-102,01-12ブラッグ条件の周りで、試料をロッキングさせ、Niの蛍光強度を記録した。 市販の基板に集光していないビーム(0.1mm)を当てた場合複数の回折ピークを観察したが、集光することでピークは1個に見える。集光ビームを用いた結果、より数の少ないドメインに照射した効果が現れた。 薄膜のNi原子が規則位置を占有していない場合、蛍光強度はロッキング曲線と一致する。得られた蛍光曲線はロッキング曲線とはピーク位置、形状、高さが一致しないため、Ni原子はそれぞれの網平面位置に対して規則的な位置を占有していることを示した。 この蛍光曲線の非対称性が観察できたことから、結晶完全性の劣る酸化物試料へのHXSW法の適用の新しい光学系を提案できたと考えた。
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