研究概要 |
強誘電体超薄膜の分極反転速度の直接測定の準備として、パルス電場によって薄膜内で誘起される原子スケールの格子歪を検出するナノ秒オーダーの時分割X線回折測定と電気分極の高速測定を組み合わせた物性同時測定システムを開発した。強誘電体薄膜試料に実際に適用し、X線回折測定から格子歪、QVから分極Pを求め、薄膜の圧電定数と電歪定数とを決定した。 複合屈折レンズを用い数μmに集光した放射光パルス単色X線をナノ秒オーダー幅のパルス電圧が印加されている薄膜試料キャパシタ(構造Pt/410nm厚エピタキシャルBiFeO_3(001)/下部電極)に入射させた。今回のシステムでは最大電圧100V、最小パルス幅30nsを利用可能である。残留分極+Prの状態に処理してから、ユニポーラの電場を印加した。薄膜から生じる回折X線強度をナノ秒時間と逆格子位置との双方の関数として記録した。回折強度のピーク角度位置を解析し電場に、つまり逆圧電効果によって、誘起された10^<-4>の格子歪を検出できた。同時に同じ上部電極を用いユニポーラ分極Pを測定した。 印加電圧は高さ10,7.5,5,2.5,0,-2.5V、幅200nsを用いた。電場印加された試料薄膜の格子歪を電場の関数としてプロットした。その格子歪は電場に対して線形に増加した。その勾配はd_<33>圧電定数を示しており、28pm/Vの値を得た。格子歪を電気分極の2乗(P^2-Pr^2)関数としてプロットした。その勾配から電歪定数1.4x10^<-2>m^4/C^2を得ることができた。この電歪定数は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する効率を表している。得られた値は知られている最大の値であるバルクのチタン酸鉛の値が8.9x10^<-2>m^4/C^2と比肩できるので、効率よくそのエネルギー変換できる材料としてBiFeO_3薄膜は有望であることが分かった。
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