研究概要 |
本研究は,幅や高さが数10nmサイズのナノ流路を利用して,生体分子を1分子ずつ検出する1分子センシングデバイスを実現するために必要な要素技術の開発を目的としており,今年度はデバイスのポータブル化によるオンサイトでの超高感度測定の可能性を開拓しつつ,配線の最小化による低ノイズ化を同時に達成すべく,ナノ流路チップ上への電気測定回路の集積化を行った。 測定回路としては,オペアンプを用いた電流-電圧変換回路(トランスインピーダンス回路)をチップ上に直接構成した。fAの検出のためにはTΩ近い帰還抵抗が必要となるので,本研究では0.1TΩの帰還抵抗を特注で作成し,測定回路を構成した。さらに外部ノイズを低減しつつ,顕微鏡下での測定を実現するため,透明導電帯のIndium Tin Oxide (ITO)を使用した内部観察可能なシールドを構成し,シールドボックスの外部でのfA級の電流測定セットアップを実現した。 その結果,市販の超低入力バイアス電流のオペアンプと,高精度帰還抵抗,およびチップ上のリーク電流や寄生容量を考慮した電気配線パターンにより,1.25インチ角上の石英チップに,ナノ流路と電流測定回路を同時に実現すると共に,超高感度の電流測定の実証に成功した。現在,ノイズレベルは数10fAオーダーで,数100fA程度の電流測定能を達成している。今後ガード電極などの更なる低ノイズ化手法を併用して,サブfAオーダーの電流感度へと到達させる予定である。更に,インピーダンス測定による誘電率評価を実現するため,インピニダンス測定用の回路のオンチップ化も検討していきたい。
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