研究概要 |
水銀イオン応答遺伝子と蛍光蛋白発現遺伝子を組み込んだ大腸菌を固定化し、水銀イオンセンサとして応用する研究を展開している。水銀イオンを含む培地で選別培養された水銀イオン耐性大腸菌は水銀イオンに応答する遺伝子merRをもつ。このmerRにより発現される水銀制御蛋白MerRによる蛍光蛋白発現系とプラズモン増強励起を組み合わせた水銀イオンの蛍光分析系を考え、実証研究を行った。MerRの水銀結合ドメインMBDを2つタンデムにつなぎ、両端に黄色蛍光蛋白のN,C末端をそれぞれ融合させ、蛋白をマイクロ流路に固定化するのためのstrep-tagを含むコンストラクトを作製した。この大腸菌をガラス製マイクロ流路に固定化し、プラズモン増強励起による蛍光測定を行うため、大腸菌と金コロイドの両者を安定に、しかも大量に固定化できる表面コート剤を各種検討した。大腸菌は正電荷をもつ表面に静電的に吸着される。また、金コロイドの表面は負に帯電しており、基板にアミノ基を修飾することが適当と思われる。しかし、従来よく用いられたポリリシンコーティングは疎水性で、菌体と金コロイドの定着率が悪く、親水性をもつアミノコートが望ましいことが明らかになった。そこで、種々のシランカップリング試薬を検討し、および強い親水性を持つ市販のMASコートおよびポリエチレンイミンが最適であることを見出した。これらコーティング剤では金コロイドが集合化したギャップモードが形成され、プラズモン増強励起に有利なうえに、菌体の生存率がポリリシンと比較して高いことが明らかになった。今年度の研究により、菌体を固定化したマイクロ流路の作製法が確立されたので、今後、水銀イオン応答についで検討を進める予定である。
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