本研究では、量子通信・量子計算機を実現する為の、フォトニックドット(PD)デバイスと呼ばれる単一光子発生器を、高度なエピタキシャル成長などを使用せずに、化学合成によって製造されるポリマー分散型量子ドットとポリマー光導波路との組み合わせで実現するための、基礎的な検討を行う。 初年度である今年度は、1.試作技術の構築、2.光共振器性能の実現、3.構造設計技術の構築、の3つのサブテーマを掲げて、研究を開始した。その結果、1.繰り返しパターンニングを用いて多層構造を作製し、所望のポリマー製両持ち梁エアーブリッジ型マイクロキャビティ構造(PDデバイス)を実現することに成功した。2.試作したPDデバイスの光透過特性の評価を行い、マイクロキャビティとしての性能を確認した。3.3次元FDTD法(Finite-difference time-domain method)による光共振器特性のシミュレーションに、構造材料の作製精度限界による形状の特徴を取り入れ、シミュレーション結果と実測結果がよく一致するようにしたことで、精度の高いデバイス設計を可能にした。更に、スイッチング制御を実現する為の候補となる優れたPD構造を、シミュレーションによって見い出した。概ね当初の計画通りと言えるが、若干の計画変更を行い、当初予定していた量子ドットを内包するPDデバイスの試作を、次年度に回すことにした。一方、新規なサブテーマとして、化学合成によって量子ドットを自作する研究を開始し、より構造対称性の高い量子ドットを実現する為の初期的な成果を得た。
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