本研究では、量子通信・量子計算機を実現する為の単一光子発生器を、高度なエピタキシャル成長などを使用せずに、化学合成によって製造される量子ドットと、ポリマー光導波路との組み合わせで実現するための、基礎的な検討を行う。 2年目の今年度は、1.共振器を有する発光デバイスの実現、2.対称性の高い構造を実現する為の量子ドットの化学合成技術の構築、の2つのテーマを掲げて、研究を開始した。 まず、ポリマー製マイクロキャビティと量子ドットを組み合わせる技術に取り組んだ。ポリマー(PMMA)に量子ドットを混入してGaAs基板上に1ミクロン厚の層を形成し、そこからのフォトルミネッセンス発光を確認した。このポリマー層を加工して、マイクロキャビティとすればよい。昨年度に実現したマイクロキャビティより更に光閉じ込めを強める目的で、ポリマー層と基板との間に薄いAu層を設けるプロセスの開発に着手した。Au膜による近接効果の増大によってポリマー層のプロセス条件が大幅に変化し、時間がかかったものの、目的とする構造の製造技術に、ほぼ目処を付けることができた。 一方、構造対称性が高く、発光波長の均一性も高い量子ドットを実現するべく、量子ドットの合成技術の検討を進めた。原料の選定、分散剤の添加、及び遠心分離による選別を行った結果、形状が等方的で、比較的サイズの揃った、直径数ナノメートルの球状の量子ドットを得ることができた。発光波長は1.3ミクロン付近を中心に分布しており、この波長帯で発光する従来市販されている化学合成型量子ドットと比較したところ、発光の偏光等方性が大幅に改善していることが確認できた。この研究成果について、国際会議において口頭発表を行った。 以上の研究で蓄積したノウハウや実績をベースに、引き続き、対称性の高い量子ドットをマイクロキャビティに内包したアクティブデバイスを構築すべく、研究を進行中である。
|