研究課題/領域番号 |
20510121
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
野々村 禎彦 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (30280936)
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研究分担者 |
田中 秋広 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (10354143)
河野 昌仙 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (40370308)
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キーワード | 計算物理 / 超伝導材料・素子 / ジョセフソン接合 / テラヘルツ波発振 / 表面インピーダンス / 動的相転移 |
研究概要 |
高温超伝導ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波発振では、従来は接合面に並行に磁場を印可し、ジョセフソン渦糸を直流電流で駆動して発振させる機構が主に研究されてきたが、磁場を印可しない方が容易に発振が起こることが最近実験的に示された。この新しい発振機構では接合を1000層程度、従来研究されてきた系よりも2桁近く厚く積み、発振する電磁波の波長も従来よりも1桁以上長くなる。我々は、この実験を踏まえて数値的研究を進めた。まず、厚さは無限大、幅は実験と同程度(侵入長の数分の1)の接合に磁場を印可した場合に、ジョセフソン渦糸の間隔が電磁波の波長と等しくなる点の近傍で発振強度が比較的鋭いピークを持つ、従来調べられてきた磁場中発振と同様の振舞を示す。発振の周波数は交流ジョセフソン関係で与えられ、印可する電流が臨界電流に達しない範囲で、いわゆるテラヘルツ・ギャップに相当する周波数は覆われる。他方、接合の厚さは実際には有限で、1000層程度積んでも発振する電磁波の波長よりも薄く、接合と大気の誘電率の差も大きいため、接合の表面インピーダンスZは1よりも大きくなる。そこでZの値を連続的に変化させて磁場を印可しない系の発振状態を調べ、Z=2〜3(細かい値は電流値によって異なる)で、Z=1における磁場中発振に連続的に繋がる弱い発振状態から、空洞共鳴で特徴付けられる強い発振状態への動的相転移が起こっていることを示した。さらにZを1〜10000の範囲で変化させて発振が最も強くなるZの値を求め、表面インピーダンスZに関して発振性能を最適化することに成功した。また、従来型の接合(厚さ数10層、幅数μm程度)の磁場中発振に関しても数値的研究を行い、接合の幅に応じた発振状態の変化を議論した。
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