研究課題
高温超伝導ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波発振では、従来は接合面に平行に磁場を印可し、ジョセフソン渦糸を直流電流で駆動して発振させる機構が主に研究されてきたが、磁場を印可しない方が容易に発振が起こることが最近実験的に示された。この新しい発振機構では、接合を1000層程度、従来研究されてきた系よりも2桁近く厚く積み、発振する電磁波の波長も従来よりも1桁以上長くなる。昨年度に引き続き、この実験を踏まえて数値的研究を進めた。接合の厚さは発振する電磁波の波長より薄く、接合と大気の誘電率の差も大きいため、接合の表面インピーダンスZは1よりも大きくなる。そこでZの値を連続的に変化させて磁場を印可しない系の動的相図を求め、従来提案されていたいくつかの発振状態は、バイアス電流JとZの変化に応じた定常発振状態として包括的に記述できることを示した。また、零磁場でテラヘルツ波発振を示す系に接合面に平行に磁場を印可した場合の発振状態を調べ、同様の実験で報告されている発振強度の磁場依存性の矛盾(特定の磁場でピークを示すか、磁場とともに単調減少するか)は、Zの値に応じた磁場依存性のクロスオーバーとして理解できることを示した。さらに、発振強度の磁場依存性における特徴的なピークは、π位相kink状態(零磁場中でJがある程度大きくなると安定、Zが大きくなると空洞共鳴条件近傍で強い発振)・非整合位相kink状態・一様位相状態(零磁場中ではJ,Zとも小さな領域で安定)の磁場誘起動的相転移と密接な関係があることがわかった。
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Journal of Superconductivity and Novel Magnetism online
ページ: DOI : 10.1007/s10948-010-0690-0693(1-4)
Physical Review B 80
ページ: 140506(R)(1-4)