研究概要 |
本研究の目的は, コーポレート・ファイナンスに関する諸問題を意思決定問題として捉えて, 実務に耐えうる定量的な指針を与えることである. その際, 最大の焦点は, 企業の資本構成の最適化である. 本研究の当面の目標は, 最適な資本構成比について定量的な情報を与えることである. 実務に耐えうる指標を示すには,市場情報や企業固有の情報を勘案した, 最適資本構成のモデルを必要とする. 市場情報には大きく株式市場と社債市場がある. これらの双方の情報を矛盾無く取り込んだ資本構成モデルが有用であろう. そこで, 当年は, これまでのコーポレート・ファイナンス分野で一般的な無期限社債モデルを有限満期モデルへと修正することから始めた. 企業の負債は一般にこれまでの理論モデルとは違い有限だからである. 有限満期社債モデルは市場が当該企業をどのように評価しているかを明確にしてくれるので, 企業もその事実を勘案し資本構成の最適化ができる. 有限満期社債を扱う資本構成モデルでは, 解析的な取扱が難しく, 企業の資本構成を最適化することが難しい. また, 種々の入力パラメータの影響を調べるのに時間と手間がかかる. 本研究は社債を有限満期とした場合に, これまでの既存研究結果がどのように変化するかを確かめるものである. 最終的な目標を達成するにあたって事前に問題の性質を把握しておくためでもある. 本モデルをさらに拡張し, 株式市場の情報を利用することが次のステップとなる.
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