研究概要 |
レジームシフトを導入した最適投資問題について,さまざまな条件設定の下で最適投資戦略を導出し,その性質を分析した. (1)投資対象資産の価値過程が幾何ブラウン運動にしたがい,そのスケール(レジーム)が連続時間マルコフ過程で変化するという設定の下で,最適な投資時点が価値過程に関する閾値型政策,すなわち価値過程が初めて閾値に到達する時点であること,閾値はレジームに依存して決まることを示した.また,レジームを支配するマルコフ過程の推移速度行列が中心回帰的な性質を持つ場合には,閾値の順序がスケールの順序に応じて決まることを示した.この結果を利用することでレジーム数が増えたときの計算負荷と計算精度を大きく改善することができる.また,効率的な数値計算法を提案して数値実験を行い,価値過程のスケール変化が最適投資時点に与える影響を分析した. (2)家計の住宅ローンを念頭に,金利低下局面での最適な借換政策を分析した.金利変動を示すパラメータをレジームに応じて変化させることで,金利低下や金利上昇局面を表現し,金利の将来変化を織り込んだ最適な借換政策を導出した.その結果,レジーム変化を考慮しない近視眼的な借換と比較すると,金利低下局面では借換が遅れ,上昇局面では早まる現象が観察された.また,米国住宅ローン市場を対象とする実証分析を行い,具体的な借換金利差を計算した.その結果,これまで報告されていた結果よりも,実データに整合的な借換行動が得られ,実際の借換行動が一定の経済合理性を持つとの示唆を得ることができた.
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