研究概要 |
消費者の高品質志向の高まりと昨今の食品の安全性に係る事件を受けて,生鮮魚介類をはじめとする生鮮食品の品質と消費期限をモニタリングするシステム[以下,バイオサーモメーター(BTM)と呼称)]を開発した.昨年度までに,発色の度合いが淡黄色~紫色へと変化する発色剤を利用したMTT型BTMの有効温度帯を「-20℃~20℃」と決定するとともに,BTMが破損し,内容成分が漏出しても食品に影響しない安全な成分であるかどうかを動物試験により評価した. 今年度は,無色から黄色へと変化する発色剤であるWST-3を用いたWST-3型BTMの諸条件を詳細に検討したところ,MTT型の上限温度(20℃)を上回る30℃まで使用可能な条件を決定することができた(WST-3型BTMの有効温度帯:-5℃~30℃).さらに,WST-3型BTMの発色に伴い生成される色素成分について,in vivoマウス経口投与試験を行った結果,WST-3型BTMの内容成分を投与した場合に,GOT・GPT活性値は対照試験区と同等であり,肝臓・腎臓・脾臓の臓器重量比も有意差が確認されなかった.また肝臓を摘出し観察したところ,外観に損傷も見られなかった.以上のことから,WST-3型BTMの内容成分と発色に伴い生成される色素成分に関する毒性は観察されないことを実証した.以上のことから2種類のBTMが生鮮食品の流通に導入できる可能性が示唆された.
|