研究概要 |
平成22年度は,通信システムや銀行のオンラインバンキングシステムといった常時稼動しているシステムをある1ユーザが間欠的に使用するという状況を想定して,動作・不動作状態を交互に繰り返すシステム自身の振る舞いや,そのシステムを利用するユーザの行動の様子を,マルコフ過程を用いて記述した.そして,サービス可用性を,「システムを利用することにより,ユーザが満足にサービスを受けることができる性質や度合い」と捉えて,次の3種類のサービス可用性評価尺度を導出した.(1)「時刻tにおいてユーザがシステムを使用しているとき,そのユーザ使用が中断することなくサービスを満足に完了することができる確率」と定義される使用中のソフトウェアサービスアベイラビリティ,(2)「時刻tにおいてシステムが修復中であり,かつそのとき発生するユーザの使用要求がキャンセルされる確率」と定義される使用要求拒絶によるソフトウェアサービスアンアベイラビリティ,(3)「時刻tにおいてシステムが修復中であるとき,その後に発生するユーザの使用要求がキャンセルされる確率」と定義される修復中のソフトウェアサービスアンアベイラビリティ.これらの定量的尺度は,時間およびソフトウェアシステムに対するデバッグ作業回数の関数として与えられた.本モデルを適用することにより,システム固有の信頼性特性やシステムダウン時の修復方策ならびにユーザの使用特性と,ソフトウェアシステムのサービス可用性評価の関係を把握することができることが,確かめられた. また,前年度と同様にコデザイン(協調設計)の概念を導入したハードウェアサブシステムおよびソフトウェアサブシステムの故障/修復特性を同時に考慮したコンピュータシステムに対しても,上記と同様な議論を展開した.
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