研究概要 |
2011年度は引き続き,同時刻時系列間の内積から相関行列を作り固有値問題の数値解を高速に求め,ランダム行列理論による固有値スペクトルの理論式と比較して主成分を抽出するという一連の作業を自動化するプログラムを作成し,RMT-PCAと名付けて主としてtickデータに適用すると共に,疑似乱数や物理乱数の乱数度を測定するアルゴリズムを開発し、RMT-testと名付けて数種類のデータに適用して性能チェックを行った.また乱数度の低い数列を人為的に作りその乱数度をいろいろと測定した.この過程でデータ列の対数収益をデータとした場合に特有の癖が生じることを見出し,RMT-PCAのアルゴリズムの最大の問題点である,理論式の適用限界と主成分分離を行う境界の設定について新たな知見を得た.すなわち実データの固有値スペクトルに理論最大値を2割超えた範囲にまで浸出する連続スペクトル部分があるがその正体が価格データをそのまま用いず,価格の対数収益を時系列として使うことに起因することを突き止めた.論文発表は欧州における数件の国際会議,及び情報処理学会MPS研究会,物理学会「経済物理」分科会,統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」での講演と,査読付ジャーナルIntelligent Information ManagementやLNAI(Springer),および情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用(TOM)への論文掲載を通じて成果を公開している.
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