研究課題
実証研究として、マルチファクター・モデルを用いて、インターネット・バブル期とその崩壊期の最適ポートフォリオの収益分布を日ごとに描き、統計的性質を分析した。全期間の最適ポートフォリオのリターン分布が負の方向に長い歪んだ分布になっていることが分かった。この結果は、最適ポートフォリオを計算し株式のリスクをコントロールしようとする機関投資家(たとえば、年金基金)がバブル期にIT銘柄を大量に保有し、リスクを負う結果になっていることを示唆している。この理由は規模ファクターをモデルに取り入れることで、ITバブルで資産規模が拡大した株式銘柄が高いウエイトでポートフォリオに含まれるようになり、バブルが成長する段階でそのウエイトが徐々に高まってゆくことがわかった。理論研究として、バブルの生成と崩壊が自律的に起きるメカニズムを説明する理論モデルを提案した。CAPMに従う合理的投資家と他の投資家の行動から自らの行動が影響されるノイズトレーダーが共存するモデルを考え、ノイズトレーダーが他の投資家の投資行動と同時に、株価のモメンタムに従って投資態度を決める、モメンタム・ストラテジーをとる場合、バブルの生成と崩壊が自動的に起きることを理論的に示した。為替市場において、ポートフォリオ・セレクションを行う合理的投資家とキャリー・トレードを行う投資家を仮定すると、同様のメカニズムで、為替レートのバブルとクラッシュが起きることも示せた。
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Encyclopedia of Quantitative Finance, John Wiley & Sons Ltd. Vol.2 No.1
ページ: 1-15
Econophysics Approaches to Large-Scale Business Data and Financial Crisis
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