「研究の目的」は、本学所蔵の日本企業データベースを用い、利益データで確立した分析を以下のように資本・売上・従業員数データに適用することである: 1)時間反転対称性の確認 2)成長率分布の形状より非Gibrat則を解析的に導出 3)実データにおける非Gibrat則の実証的確認。 さらに上記1)-3)より得られた、企業規模に応じた・データの種類により異なる各成長率分布を考慮して、信用リスクを統計的に評価することである。 当該年度の研究により、売上データに関して上記1)-3)の分析が終り、利益データと異なる非Gibrat則を発見した。売上データのように、成長率分布が両対数軸で曲線的になる場合の一般的な非Gibrat則を解析的に導き、売上データで観測される非Gibrat則が、その中に含まれる事を発見した。この研究により、成長率分布の形状と非Gibrat則には密接な関係があり、対象としている量が正負値をとるか正値のみをとるか、ということと成長率分布の形状にも密接な関係がある事が示された。これは本研究課題において、コンピュータシミュレーションにより示唆されていた性質である。 残る資本・従業員数データに関する分析も同じ手法で実行可能である。平成24年度より、本研究課題を再構築した新しい研究課題「企業の成長を決定づける企業規模量に関する研究とその応用としての企業の成長戦略」の中で、本研究課題を発展させた形でその分析を行う。
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