研究概要 |
本年度は,研究計画に基づき以下のように企業の研究開発に関する研究を実施した 企業は,次の2つの研究開発(R&D)プロジェクトを投資対像として検討している.一方は,生産性は高いが,その開発費が高額となるR&Dプロジェクト(プロジェクトH)であり,他方は,生産性はプロジェクトHに比べると劣るが,開発費はプロジェクトHよりも低く抑えられるR&Dプロジェクト(プロジェクトL)である.プロジェクトへの投資額が増えるにつれて,R&Dの成功確率も高まる場合について考察する.また,プロジェクトの成功によって生まれるキャッシュフローは不確実である.したがって,企業の問題は,2つのR&Dプロジェクトのうち,いつどちらのプロジェクトに投資すべきか,という問題となる.本研究では,この企業の問題を最適停止問題として定式化し,分析を行った.その結果,いつどちらのプロジェクトへ投資するのが最適かを明らかとした.さらに,これまでの多くのR&Dプロジェクトへの投資問題については,その投資額を外生的に与えていたが,本研究では,それを内生的に最適な投資額として示した.加えて,不確実性の大きさや,技術水準の程度などを表わすパラメーターなど,いくつかの経済学的に意味のあるパラメーターに対する比較静学も実施し,それらの影響を明らかとした.例えば,不確実性が大きくなると,プロジェクトLへの投資が徐々に実施されにくくなり,ある値を超えるとそのプロジェクトHのみが実施されることを明らかとした 資源・環境問題についても技術の果たす役割は極めて大きく,この分析結果を,資源・環境政策の分析に応用することで,例えば,エネルギー効率の高い新たな設備への研究開発の意思決定に対する示唆を与えることなどが期待される
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