本年度は昨年度までの分析結果に基づき、日本の国際空港が国際航空貨物の拠点空港として発展していくための具体的な戦略を検討した。 具体的な戦略の策定に当たっては、現場の声も反映すべく、各エアラインや空港関係者への意見聴取も行った。さらに、日本、韓国、台湾、シンガポールの拠点空港をベースに活動しているフォワーダーを対象に実施したアンケート調査結果について因子分析、共分散構造分析などの手法を用いて分析を行った。その結果、成田空港、関西空港、中部空港だけでなく、諸外国のそれぞれの空港のサービス水準およびハブ空港化に重要となる要因などを抽出したうえで、それぞれの要因に対する満足度、達成度などについて評価し、各空港が国際航空貨物拠点空港としての競争力を強化するための課題も明確にした。 これらの分析結果を踏まえて、日本の国際拠点空港が国際航空貨物ハブ空港として発展していくための共通の発展戦略として、国際航空貨物輸送ネットワークの充実、空港内外の貨物関連施設の使用料の低減、貨物関連施設などの改善等を政策提言として提案した。 とりわけ、航空ネットワークの充実は、空港間の貨物取扱シェアが、路線便とフレーター便数などのネットワークの規模や仕出し国、仕向け国との地理条件を踏まえた到着、出発時間の設定に大きく影響を受けているという本研究における実証分析の結果に基づいた、最も重要な提案であった。 本研究は、日本では初めて国際航空トランジット貨物に焦点を当てた調査研究であり、航空貨物誘致の重要性について実証分析を通じて提唱した。本研究成果は、日本における今後の航空貨物政策のあり方や、関西空港や中部空港等、現在国際航空貨物重視の営業戦略を持つ空港の将来の方向性に関して重要な示唆を与えていると思われる。
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