(i)円環周方向に設置されたセンサ用光ファイバで観測されるブリルアン散乱光のスペクトル形状を定式化した。ここでは、円環に生じる不均一ひずみ分布を与えるパラメータ(円環各部の形状や寸法、荷重条件、直径変化(内空変位)など)と、計測システムに関わるパラメータ(散乱光観測区間(空間分解能)など)とが用いられて定式化されている。この結果を利用して、スペクトルから円環内空変位を求める方法を考案した。これを実行するソフトウェアを開発し、シミュレージョンによって有効性を確認した。この結果は、トンネル変状検出の精度や信頼性を向上するものであり、他の円形の計測対象にも適用可能である。 (ii)昨年度構築した実験システムは、システムの特性がスペクトル観測に影響を与えないようにシンプルな構成となっており、観測用と参照用2本の光ファイバの散乱光を観測し、両者の差分として不均一ひずみ部分だけのスペクトルを検出していた。この部分が不安定なスペクトル観測の原因でることを検証し、その改良を行った。これによって、より正確なスペクトル観測、理論結果の検討が可能となった。 (iii)ひずみの局所的変化を精度よく捉えるためには、空間分解能を向上する必要がある。観測されたスペクトルにウィナーフィルタを適用し、空間分解能をそこに含まれるひずみ計測点に間隔にまで向上する方法を開発した。シミュレーションによって、一例ではあるが、従来の方法に比べひずみ変化への追随性が2~6倍向上できることを確認にした。この方法は、従来のハードウェアによる観測結果にそのまま適用可能である。また、はりの集中荷重点付近で形成されるひずみ分布に対し、実際に生じているひずみより小さいひずみが観測される従来の方法の問題を解決する特長をもっている。
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