(i)円環各部の寸法や断面形状、荷重条件、直径変化など、円環に生じる不均一(三角関数)ひずみ分布を与えるパラメータ、均一ひずみ分布下のブリルアンスペクトル形状やそのひずみ依存特性を与えるパラメータ、散乱光観測位置や区間などスペクトル観測条件を与えるパラメータを用いて、平成21年度に、円環外周に設置された光ファイバから生じるブリルアンスペクトの形状変形について定式化した。平成22年度はその結果を用いて、これらのパラメータとスペクトルの変形との関係を調べた。この定式化結果の妥当性を確認するために、実際に、直径2mの円環外周に、中心角が120°の部分に光ファイバを取り付け、0から20mmの直径変化を与えながらブリルアンスペクト観測実験を行った。観測されたスペクトル形状は、スペクトル観測区間に引張りひずみだけが発生している場合に、定式化結果と最もよく一致していた。 (ii)観測されたスペクトルと定式化されたスペクトルとの残差2乗和を最小化する条件から、円環の直径変化を求めた。上述の観測スペクトルに対して直径変化を算出した結果、計測誤差は最大でも0.7mmであった。直径の1%を超えるとその変化が進行することからそれを基準に考えれば、本結果はこの基準の28分の1の誤差であり、高い精度で直径変化が計測できることが明らかになった。 (iii)ブリルアン散乱現象を用いたひずみ計測では、光ファイバに沿った計測点の位置と周波数とをパラメータにもつ3次元情報として、ブリルアンスペクトルは記録、解析される。最近の装置では計測点数が10万点にも及ぶため、この情報量は膨大なものになる。効率的なスペクトルデータ記録や転送のために、MPEG技術を用いたスペクトルデータ圧縮・復元方法についても検討した。シミュレーションによって、ひずみが変化した場合でも、本方法によってデータ量を10分の1程度に削減できることを確認した。
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