本研究は「メダカの活動電位信号の電力周波数スペクトルの解析から得られる呼吸活動情報」と「メダカの活動電位信号の波形から得られる魚の向き・行動の変化の情報」を解析し、それらを併用することによって、精度のよい新たな毒物汚染監視システムの構築について研究を行うことが目的である。 本実験は水槽内を泳ぐメダカから発生する僅か数マイクロボルトの活動電位を数万倍に増幅して観察するものであるため、水槽に誘導される電磁雑音電流の影響を受けない信号増幅器の作成は実験の大前提である。九州大学伊都キャンパスの実験室では大規模な空調設備に起因すると思われる電磁雑音が非常に強いが、既存の信号増幅器の低域通過フィルタおよび電源ノイズフィルタの改良を行い、水槽内を泳ぐメダカの活動電位が計測できる程度まで電磁雑音の影響を抑圧できたことを確認した。 メダカから発生する活動電位を安定して計測するため、小さなケージ内に1匹のメダカを収納して、メダカの前後又は左右に観測電極を設置して、活動電位を計測した。その結果、活動電位はメダカを挟むように前後に電極を置いた場合は観測できたが、左右に置いた場合は観測できないことが判明した。また、シアン化カリウムの暴露による応答と農薬(スミチオン)の暴露による応答には異なった特徴があることが判明した。
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