研究概要 |
テロ活動には、過酸化アセトン(TATP)やニトロ化合物などの爆発物やダイオキシン類が使用されている。一般に、環境中の極微量の混合成分を測定するには、質量分析計がよく用いられているが、通常の電子衝撃法を用いてイオン化すると、分子が解裂して試料分子を正しく同定することが困難になるため、新規計測法の開発が必要である。九州大学工学研究院では、超短パルスレーザー技術を用いる"インパルシブイオン化"質量分析法の研究が行われており、今後、微量爆発物の検出などに応用が検討されているが、このような分析を実施するには、爆発物のスペクトル線の位置など、分析条件に関する理論的研究が不可欠である。 A.コンピューターを用いる分子情報の理論計算…非経験的分子軌道法を用い、プログラムとして、Gaussian03を使用した。予備的計算はワークステーション(設備備品)で行い、それを基に、九州大学情報基盤センターの高性能演算サーバー及びスーパーコンピューターに接続して計算した。爆発物であるニトロ化合物の電子基底状態及び励起状態の平衡構造とエネルギーを求め、2つのエネルギー差から励起エネルギー((0,0)電子遷移エネルギー)を求めた。 このエネルギーは、超音速分子ジェット分光分析の励起波長の初期条件を与える。基底状態のエネルギーから1電子を放出するときに必要なエネルギー、すなわちイオン化ポテンシャルを、TATP、RDXやニトロ化合物について、クープマンの定理を用いて決定した。 B.超短パルスイオン化方式による質量分析の研究・・・フェムト秒レーザーイオン化法に基づいたガスクロマトグラフィー/多光子イオン化/飛行時間-質量分析により、80fsの超短パルス光でのTATPの測定を行った。
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