研究概要 |
東海沖から熊野沖に連続して分布する遠州断層系のうち,西部については高解像度の反射法地震探査,東部については既存のデータのコンパイルを行った.西部の調査では,学術研究船「淡青丸」を用いて測線間隔の密なグリッド調査を熊野トラフ北部に分布する泥火山周辺において行った.音源はGIガンを用い,海底浅部の構造を高解像度で取得することを目指した.結果として,東北東一西南西方向に連続する背斜構造が前弧海盆下に存在することが明らかになるとともに,軸部には未固結泥の上昇・貫入による構造,いわゆるマッドリッジ,の発達を確認した.断層は陸側傾斜の逆断層が卓越するが,一部には横ずれ変形も認められ,その方向と連続性から遠州断層系の断層群に相当すると解釈した.海底面の地形は,僅かに東北東一西南西方向に直線的に盛り上がった構造を示すことより,これらの構造は活動的であると言うことができる.また,反射面ごとの変位の累積性が認められることから,活動の継続性が明らかとなった.マッドリッジとメタンハイドレートBSRの分布には関係が認められることから,断層あるいはマッドリッジに沿った地下からのガス移動が推定される.東部のデータコンパイルでは,サイドスキャンソナーによる海底音響画像と日仏KAIKO計画などによる反射法地震探査断面の解析を行った.微細地形に注目した結果,渥美半島沖の3列の断層分布の南西延長部の位置がこれまでにない精度で特定することができた.また,志摩海脚の頂部を横断する複数のリニアメントが確認できた。
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