研究概要 |
本研究が対象としている遠州断層系の活断層群は,東海沖から志摩半島沖においては断層に沿って地形的な段差が認められる一方,熊野トラフにおいては概ね伏在して分布している. 学術研究船「淡青丸」による測線間隔の密なグリッド調査データを用いて,堆積層の反射面の特徴に注目し,熊野トラフの地下構造の3次元的な分布をマッピングした.その結果,東北東-西南西方向に連続する3列の褶曲構造が認められ,1つの軸はトラフ中央部で東方に2本に分布する形状が確認された.層準ごとの堆積層の厚さの変化から,基本的に北西部が相対的に上昇する変動を示すが,最も新しい時期にはトラフ中央部全体が隆起する運動があったことが初めて明らかになった.中央部の大規模な隆起は,軸をもった変形を示していないことからドーム状の変形に起因しているものとみられる.泥火山の分布は,堆積層の層厚変化の大きい所に沿って分布している.その原因として,断層に沿った泥ダイアピルの発生が考えられる.海底疑似反射面の東海から志摩半島沖の海域は,断層に沿って北西が相対的に上昇する変動地形がみられるが,既往のデータの解析により,それを境とする堆積層の層厚の急変を確認できた.また断層に沿って堆積層の厚さの分布が平面において階段状のずれのパターンを示すことが明らかとなり,右横ずれの断層活動によるものと解釈された.表層で採取された堆積層の分布を検討したが,断層を境とした層序・岩相の著しい変化は認めることができなかった.
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