研究概要 |
科学コミュニケーションは今や国家をあげての活動となっている.地震科学に関するコミュニケーションは命に関わる情報の伝達を含むため,リスクコミュニケーションあるいは防災教育なども視野にいれて活動する必要がある.昨年度に発生したチリ中部地震では津波の日本への到達が予測され,地震発生から津波の後続波による危険性がなくなるまで,一日以上にわたって注意報や警報が発令された.テレビ画面での津波注意報・警報域の表示などメディアも一丸となった災害情報の発信を継続したと言える.その効果をはかるために,本研究の枠組みで津波に関する意識調査を実施した.地震発生から一週間後に,国内に居住の2060人を対象として,ウェブアンケート会社を通して行った.日本人の有する津波に関する基礎知識や津波リテラシー,そして災害情報の発信の仕方を問う全22問と自由記述項目からなる.津波に関する知識についての設問では,「地震の発生と津波の発生とに関連があると思うか」「外国で起きた地震で発生した津波は日本まで到達することがあると思うか」などの問いに対しておよそ95%の正答率が得られるなど,日本人の津波に関するリテラシーの高さが伺えた.また,気象庁が発表した警報を防災の観点から適切と捉えるかどうかを問うた調査結果では,「必要以上に不安をあおった」との回答は24%にとどまり,63%が「適切だった」と回答している.「もっと注意を呼びかけるべきだった」との回答も5%あった.最大で3mの津波が来るとした大津波警報の発令に関して,適切であったと捉える国民が半数を超えていることがわかった.この結果は新聞やテレビなど各種のメディアに取り上げられた.今後の災害情報発信のあり方を考えるにあたって有用な資料となったといえる.
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