本研究は、福岡都市圏流域の河川を対象とし、リアルタイム降雨・水位情報と気象庁による降雨予測情報を併用した、土砂氾濫も考えた浸水被害早期予測システムの構築を図るとともに、それに基づいた避難システムのあり方について検討を行うものである。平成20年度は、以下のふたつの課題について研究を実施した。 (1)福岡都市圏流域における浸水被害の早期予測技術の開発 福岡市の中心地の天神・中洲地区を流れる那珂川下流域を対象とし、1999年6月29日の集中豪雨を想定降雨として、密集市街地における浸水被害の予測技術について検討した。まず、Dynamic Waveモデルに基づく不定流計算を行い、河道の任意地点における洪水位予測と、家屋が密集した河岸における越流点・越流量の検出・評価法を明らかにした。次に、建物密度を考慮した平面2次元氾濫計算を行い、道路や地下空間、特に天神地下街や地下鉄駅の浸水被害の予測技術について検討した。 (2)避難システム構築に関する研究 災害過程に関する新しい研究動向をフォローし、災害に対する地域社会の脆弱性と復元=回復力を規定する諸要因について検討を行い、コミュニティのサイズや歴史的特性、住民どうしの紐帯の質がそうした脆弱性や復元=回復力を左右するのではないかという暫定的知見を得た。その上で、2003年九州北部豪雨災害および2006年鹿児島北部豪雨災害を対象に、その後の防災対策や避難対策の展開についてフォローした結果、地域住民の自主的な取り組みや組織化が活発な地域とそうでない地域とが存在することを明らかにした。
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