研究概要 |
近年,強風の発生や想定外の集中豪雨の発生がみられ,今後一層の樹木や森林,果樹等の被災増加が予想される。しかし,複雑な樹形構造を有する樹木の抗力評価は遅れており,倒伏時の樹木に作用する流体力の評価や対策は経験的な予測の域にある。本研究は強風下の樹木の倒壊や森林の被災及び洪水時に水没し倒伏や破断に至る樹木の抗力特性に関し,流体力を評価する現地実験と実験研究を行う。平成20年2月強風によって河道内樹林約800本が倒伏や破断の被害を受けた阿武隈川左支川,荒川における被災現地調査と倒伏や破断に至る機構解明のための樹木引き倒し現場試験を国土交通省と協力して実施した。被災樹木の65%は倒伏,35%が幹途中からの破断であった。通常,松は根の耐力が強く倒伏しないが,現地は砂防区間に近く,砂礫層上の樹林のために倒伏した松の根は直径30cm程度の礫を多く抱いており,直根のない状態であった。また,樹齢は70年から80年にピークを有し,樹高20m以上で,林冠から約6m程度高く,樹冠が風応力を直接受けた。引き倒し実験から倒伏モーメントは約120kNmと推定され,胸高直径における抗力は5kNと推定された。破断した松の降伏力を算定するために引き倒したものの木材曲げ試験を実施した。破断モーメントは直径14cm程度で26kNm,直径24cmでは130kNと幅広い値が得られ,太いものでは倒伏に比べて僅かに大きな値であった。破断は林冠内の幅広い樹木に生じており,根の耐力の高いものが破断したことを示した。本研究により,風応力による本樹林帯の被災時の流体力算定が可能になった。
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